【36】VR技術による「自分が自分に診察される体験」を通じた高度な医学教育システムの構築
呼吸器外科 医師
医学教育において、診察基本手技をどのように指導するかは重要な課題である。診察基本手技は臨床実習前後の共用試験Objective Structured Clinical Examination(OSCE)において問われるが、自分の診察の仕方が患者にどのような思いをさせているかを知ることは、自らの診察技術の向上に直結する。このため、以前は医学生が模擬患者役を担い、被検者としての体験を積む事が可能であったが、昨今は情報漏洩の観点から禁ずる方向になっており、また、女子学生は肌を露出するような診察手技の被検者とはなりにくい。加えて医師役・患者役の学生同士の人間関係によっては、馴れ合いを生じ、思ったような成果が得られない場合がある。
そこで、VR技術を用い「自分が自分に診察される体験」を再現すれば高い教育効果を発揮するのではないかと考えた。具体的には、①まず、自分(医学生)が診察する様子を模擬患者に備え付けたVR撮影用具(カメラ等)で収録する。②その映像をVRゴーグル等で診察者本人に見てもらうことで、「自分が自分に診察される体験」をしてもらう。③自分の診察を患者目線から客観的に評価し、診察手技向上に活用してもらう。①②③のステップは、自らの足らざるところ、盲点になっているところに自覚や気付きを与え、診察技術を向上させるのみならず、医学生が患者の立場に立ってものを考えるきっかけを作ることとなり、高い教育効果を発揮すると期待される。