公益財団法人長野県産業振興機構では、医療福祉関連産業の振興を推進しており、その医工連携事業の柱の一つである「商談会併催・医工連携セミナー」を毎年開催しております。
本講演では、信州大学医学部外科学教室 消化器・移植・小児外科学分野 教授の副島雄二 氏をお招きし、「肝胆膵・移植外科領域における最先端技術と課題」についてご講演いただきます。
近年、肝移植領域は、40年続いた静置冷保存に代わる常温・低温機械灌流(NRP・HOPE)といった動的保存法の導入により革新期を迎えています。
これにより、マージナルドナー肝の利用拡大や移植成績の向上、医療従事者のQOL向上が期待されています。この技術は臓器修復を可能にし、さらには異種移植やAIマッチングモデルと融合した「次世代肝移植」が現実味を帯びています。
一方、悪性腫瘍で予後不良な膵癌は症例数が増加していますが、外科手術の基本術式は不変です。特に、死亡・合併症の最大原因である膵切除後膵液漏は未解決の課題であり、その防止法開発が強く求められています。
本講演では、これら肝移植と肝胆膵外科における最新動向と今後の展望について概説いただきます。
医療機器の開発に取り組まれている企業の皆様、医療機器の開発にご関心のある皆様に特にご覧いただきたい内容となっております。
また、講演の途中には、長野県の素晴らしいものづくり企業のご紹介もございますので、関心を持っていただけました際は、ぜひ長野県産業振興機構の展示会場から「見たよ」を押して出展企業とご交流くださいませ。
近年、肝移植領域は外科的戦略の革新により大きな変革期を迎えている。特に、開発から 40 年以上行われてきた従来の静置冷保存に代わり、常温・低温機械灌流(NRP・HOPE)などの動的保存法が臨床応用段階に入り、マージナルドナー肝(高齢・脂肪肝ドナー、心停止ドナー肝など)の利用拡大と移植成績の向上、夜間手術の回避による移植外科医と医療従事者の QOL 向上が期待されている。これらの技術は薬物投与や遺伝子治療といった「臓器修復」の可能性を拓くものであり、すでに欧米を中心として日常診療となりつつある。さらに、遺伝子編集ブタの臓器を用いた異種移植や AI を用いたドナー・レシピエントマッチング予測モデルなども臨床現場に導入されつつあり、これらを融合した「次世代肝移植」が現実味を帯びている。
一方、肝胆膵領域に関しては、近年、悪性腫瘍の中で最も予後不良である膵癌の症例数が一貫して増加している。薬物治療については精力的に研究が行われているが、外科手術においては、ロボット手術などの新しいプラットフォームが導入されているものの、基本的な術式は昔から変わりがない。なかでも膵手術関連死亡・合併症の最も大きな原因である膵切除後膵液漏は、未だに解決できていない外科医の永遠の悩みであり、防止法開発のインパクトは計り知れない。
本講演ではこれら最新動向と今後の展望を概説する。